すゅん/Суюнのメモ帳/裏紙

またの名をゴミ捨て場

音楽の「文脈」をガン無視したら〇〇と呼ばれてしまった話

はじめに

この記事では自分の思考やらなにやらをいろいろと言語化してありますが、あくまでも個人の考えや感想に過ぎません。あしからず。


「音楽を聴く」∈「情報を受け取る」という話

楽曲には様々な情報が詰まっている。音の高さであるとか、音色、歌声…などなど。注意深く聴けばどの楽器が使われているか、あるいは誰/何*1が歌っているのかといったこともわかるだろう。これらは「楽曲から直接読み取れる情報」である。

また、どの楽曲にも必ずその曲を作った人がいる*2し、ほとんどの場合タイトルがつけられているし、歌であれば歌詞という文章が存在する。最近では曲が公開される際にPVやMV――楽曲と密接に関係する映像もついてくる事が多い。こういったものは単に楽曲を聴いただけでは分からないが、楽曲からほぼ直接アクセスできる情報であり、先ほどの「楽曲から直接読み取れる情報」に含めてよいだろう。



…というのが前置き――「そういえば、そうだな」と読者(あなた)に納得してもらう*3部分――で、ここから本題に入る。


「楽曲から読み取れない情報」の話だ。

「楽曲から直接はアクセスできない情報」も存在するという話

いきなりではあるが、まずこの曲を聴いて欲しい。(もしかしたらどこかで聴いたことがあるかもしれないが、ここではあなたが初めて聴いたという仮定のもと話を進める。)

どうだろう? この曲を聴いた感想を教えて…もらうのはこのブログという形式上無理なので、感想を心の中に思い浮かべて欲しい。









思い浮かべただろうか? では話を続けよう。



この曲を初めて聴いた者の中で、「泣ける」という感想を抱いた者はおそらく存在しない



…と私は予想する。



初見の人は「え、これは泣ける曲なの?」と思うかもしれない。そう、実はこの曲は泣ける曲なのだ。

アイドルマスターシンデレラガールズに新たに辻野あかり、砂塚あきら、夢見りあむが加わり、作品の中で三人が出会い、#ユニット名募集中というユニットを組み、そのすぐ次の総選挙でりあむがまさかの3位になってCVが実装され、一方あかりとあきらはしばらくの間声無しのままで、しかしながらインターネット玉突き事故によってブームが起こり、あまりにも拡大し長続きしたブームによってボイスアイドルオーディションであきらが2位、あかりが1位となる快挙を成し遂げ、CV実装をまだかまだかと待っていたらいきなりテレビCMであかりが「えいっ」としゃべり、そして声が3人そろって、デレステのボイスアイドルオーディションの上位3名のための新曲のイベントで3人が絡み、そのちょっと後、久しぶりに開催されたライブに3人が出演し、そして10thツアーにバラバラに参加した後ファイナルで揃い、その前日のエイプリルフールのミニゲームにも登場し、さらにその次のライブでも3人が出演することが決まり、ライブの少し前に公開された10周年記念アニメのラストでいきなり#ユニ募の新曲の存在が明かされ、そしてライブでこの曲が披露され、それがなんとエイプリルフールのミニゲームであきらが鼻歌で歌ってたことが判明してちょっとした騒ぎになって、そしてライブの少し後、デレステでこの曲のイベントが行われ、イベントのストーリーで3人がすれ違い、感情をぶつけ合い、そして募集中だったユニット名を#UNICUSと改めた――

…といった情報を知っていればの話、だが。

こういった情報は楽曲からは読み取れない。曲を聴く者が自分で調べるしかない。このような「楽曲から直接は読み取れない情報」を、この記事では「文脈」と呼ぶことにする。アメリカ語で言うならContextだ。(背景といった方がわかりやすいかもしれない。その場合は以下の文章をそれで置き換えて読んで欲しい。)

多くの楽曲には「文脈」が存在する。デレマスに限らず、オタク向け音楽作品の楽曲のほとんどに当てはまるだろう。また一般的な曲でも、作者の体験や経験、作者が込めたメッセージ*4であるとか、過去のライブや演奏会で素晴らしい演出/パフォーマンスが行われたこととか。クラシックなんかだと時代背景とかも重要になってくる。

「文脈」を知らなくても曲を楽しむことはできる。だが「文脈」を知ることによって曲を聴いたときの感想/感情が大きく変化する。逆に言えば、「文脈」を知らないということは、その曲が持つポテンシャルを真に発揮できないということを意味する。「文脈」というものはそう簡単には無視できない、とても重要な情報なのだ。


さっき「ここから本題に入る」とか言っておいてアレなのだが、本当はここまでが前置きだったのかもしれない。すまんかった。というのも、ここまでは一般的な話だったが、ここから具体的な話に入るからだ。まぁ、ただの自分語りなのだが。「お前の話なんか聞きたくね―よ」という人はここでブラウザバックするか、ちょっと我慢して聞いてほしい。

「君はボカロ曲を聴いて発狂できるか?」

知ってる人も多いと思うが、自分は現在VLL*5というサークルに所属している。VLLでは毎年MIKUECという、ボーカロイド(及びそれに類する者)の楽曲を用いたファンメイドライブを開催している。去年もまたMIKUEC2022が開催され、そのうちの1曲の照明演出に関わった、のだが…。

以下の表はセットリストの一部を抜粋したものである*6

No. 曲名
N/A MC3
14 エゴ
15 霽れを待つ
16 Last Night, Good Night
17 ファイヴ
N/A テーマ前MC
18 Only Glitter(テーマソング)
N/A MC4
19 ODDS & ENDS

自分が担当したのは17番目のファイヴという曲である。当初は製作には関わらない予定だった*7のだが、なにかしらの事情があったらしく、暇していた自分に声がかかったのである*8

だが、この一連の流れは、非常に重要なパートなのだ。これがどれだけ重要なのかは、ググれば感想ツイートやnoteがでてくるはずなので、そちらを参照して欲しい。問題なのは、


それがどれだけ重要なのかが、自分には一切わからない


ということだ。(もしこの重大さを知っていたならば、おそらくこの仕事を引き受けていなかっただろう)

これに限らず、自分はボカロ曲の「文脈」をほぼ全く知らない。「文脈」を知るオタク達が呆然し、泣き崩れ、発狂している横で、自分はただ単に「良い曲だな~」と思っているだけである。


当たり前だが、VLLはボカロ好きが多く集まるサークルであり、MIKUECには様々なボカロ好きの情熱とか血とか汗とか涙とか睡眠時間とか単位とかが詰まって作られている。

一方、自分はボカロは好きだけれども、しかし大好きと言えるほどではなく、ボカロ曲は昔ちょっと聴いていた後VLLに入るまでは全然聴いておらず、VLLに入ってから再び聴くようになった人である。ボカロ好きであれば全員知っているような有名曲ですら知らない曲があるくらいだ。


果たしてこんなやつがVLLにいていいものなのか?


いろいろと自問自答し…悩みに悩み…もう金欠とか留年して忙しいとかを理由にしてVLL辞めるか…とか考えていた*9、そんな頃…

事件が起こった。

「お前が『文脈』を作るんだよ!」

2023/1/27 18:00頃、Cool jewelries! 004の収録曲が発表された。jewelries!シリーズはデレマスのアイドルがソロで既存曲をカバーしたものが収録されるのだが、そのカバー曲はプロデューサー*10たちの応募した楽曲の中から選ばれるのである。

さーてどんな楽曲が選ばれたのかなーとリンクを開く。

columbia.jp

収録内容

Tr.01 Starry Night

 作詞:渡部紫緒  作曲・編曲:坂部剛

 歌:松永涼、三船美優、森久保乃々、藤原肇、砂塚あきら

知らない曲だな…。*11

Tr.02 Mela!

 作詞:長屋 晴子、小林 壱誓  作曲:peppe、穴見 真吾

 歌:松永涼

 ※オリジナル・アーティスト:緑黄色社会

知らない曲だな…。

Tr.03 レイニー ブルー

 作詞:大木 誠  作曲:徳永英明

 歌:三船美優

 ※オリジナル・アーティスト:德永英明

 ※「Rainy Blue~1997 Track~」のカバーとなります。

あ、これは知ってる*12

レニーブル~うおうお~ 終わったーはーずなのにー

Tr.04 空想フォレスト

 作詞・作曲:じん

 歌:森久保乃々

 ※オリジナル・アーティスト:じん

………………ん?

Tr.04 空想フォレスト

 作詞・作曲:じん

 歌:森久保乃々

 ※オリジナル・アーティスト:じん

!?!?!?!!!?!?!?!??!!?!?!??!?!??!?!?!?!??!?!??!?!??!??!??!?!?!!?!!???!??!?!??!?!??!!?!?!??!??!?!??!!?!?!??!??!?!?!??!!?!?!??!?!??!?!?!?!??!?!??!?!??!??!??!!?!??!!?!?!??!??!?!??!!?!?!??!??!?!??!!?!?!??!??!?!??!!?!?!??!??!?!??!!?!?!??!??!?!??!!?!?!??!??!??!?!?!??!??!??!?!??!

これワイが選んだ曲やんけ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!






話はおよそ半年以上前に遡る。


デレステを始めてからしばらく経ち、ライブにも現地参戦するようになってきたわけだが、他のPの人と関わる際に電通大生としてのアカウントを教えるのは流石に駄目だろ…と考え、新たにアイマス用のアカウントを作ることにした。これが2022/5/1のことである。

その少し後の5/23にCool jewelries! 004のカバー曲の公募が始まった。参加アイドルは松永涼、三船美優、森久保乃々、藤原肇、砂塚あきらの5人。

自分は一応森久保乃々が担当アイドルである。一応、と言ったのは、自身をPと名乗ることにちょっと抵抗があったからだ。ただもりくぼが好きで、もりくぼのCDやらグッズやらを集め、ライブでペンラを振る程度しかしておらず、彼女に何一つ貢献できていないのではという考えのもと、「ただアイマスのコンテンツが好きなだけの人」として暮らそうと考えていたのである。

とはいえせっかくだから何かカバー曲のリクエストを出してみようか…しかし何にしようか…。と思い悩む。何も思いつかなければ何も出さなければいいだけの話ではあるが…。

このあたりかなり昔のことなのでもう記憶があやふやなのだが…おそらくVLLに入った影響だろうか… どういう経緯だったのかは覚えていないが、昔聴いていたボカロ曲に再び出会ったのだ。



聞き終わって思った。「これめっちゃもりくぼじゃん…」と…。

そして思った。「いや、さすがに失礼が過ぎないか?」と……。


この曲にどんな「文脈」があるかってことくらい自分でも知っている。さっき自分はボカロ曲の「文脈」をほぼ全く知らないと言ったが、その数少ない例外がこれだ。


カゲプロについては説明不要だろう*13。とても昔の話であるが、あれに一時期はまっていたのだ。当然、この曲のことも知っているし、物語のことも知っているわけである。

その「文脈」をガン無視してもりくぼの歌ということにして良いものか?原作のファンに怒られるのではないか?と結構悩んだ。そのことは覚えている。

だが結局この曲をリクエストとして応募することにした。理由は「この曲ともりくぼとの親和性がとても良いというアイデアをどうしても捨てきれなかったこと」の他に、「どうやらボカロ曲は選ばれないらしい」という噂を聞いていたからというのもあった。

こうして締め切りの6/20の少し前、6/17にリクエストを提出したのである。

なお他のアイドルには一切応募していない。もりくぼ単発である。






…というのをすっかり忘れていた。「文脈」ガン無視リクエストが採用される可能性を全く信じていなかったのだ。

マジでびっくりして震える手でスマホのスクショを撮り、いつもより雑にトリミングしてツイートした。

このときあまりにもびっくりしすぎて全く考えていなかったのだが、カバー曲をリクエストしたPの名前も公開されることになっているものの、同じ楽曲で複数リクエストがあった場合は抽選で1人だけが発表されることになっている。つまり自分以外の人の名前がある可能性も十分にあるのだが…。

■カバー曲 選曲プロデューサー

(中略)

『空想フォレスト』: ぷちっつぁ さん

はい、やってしまいました。全国デビューです。


このあとめちゃくちゃ通知が来た。



そして「空想フォレスト」と「森久保乃」*14がトレンド入り。自分でも調べてみたら肯定的な反応ばかり。それどころか「天才かよ」というツイートがかなり多く見られた。


他に多かったのが

  • アイドルになる前のもりくぼ:空想フォレスト
  • アイドルになったもりくぼ:(ここにbrave heartを当てはめる人もそこそこいた)
  • アイドルをやめた後のもりくぼ:もりのくにから

で三部作になっているというもの。

おい、新たな「文脈」が生えたが?????



他にも天才はいました

当初はめちゃくちゃ浮かれていたものの、その後もうちょっと調べてみたら自分以外にも空想フォレストをリクエストした人が少なからずいたので、「なんだ自分だけじゃなかったのか…」と、今では落ち着いている。それでもよりによって自分の名前が載ってしまったことを時々思い出しては「ンヒ~~~~~~~~~~↑」ってなっていたりする。助けてくれ。

今後の予定

今まではプロデューサーを名乗る資格などないと思っていたが、まさかのカバー曲採用という超重大イベントが発生してしまったからには名乗らないわけにはいかなくなってしまった。というわけで今後は普通にPを自称します。俺が森久保Pだ。

それとこの一件で「文脈」は従うだけじゃなく自分で作ってもいいんだ*15という知見(?)が得られたので、もう少しVLLには所属したままでいようと思います。(とはいえ留年して忙しくなるのは確実なのでたぶん幽霊部員と化すだろうけど…。)



あ、そうだ(唐突) もしかしたらアイマス方面からこの記事にたどり着いたという人もいるかもしれないので、その人向けに宣伝しておきますね…。

Only Glitter…MIKUEC2022のテーマソングです。


ラスサビ直前でUO折りたくなる…ならない? あ、ならない。ですよね…。



おわり


脚注

*1:最近では人ならざる者(あえてこの表現をする)が歌う曲も多数存在する

*2:昔だと誰なのか不明なこともある。しかし誰かの手によって作られたのは確実だ。

*3:10回読んで納得できなかったらごめんね…

*4:こういうのはたいていインタビューで語られたりするものだ。

*5:Virtual Live Labの略。

*6:日替わり曲もあったのだが、この部分には含まれていない。

*7:留年のピンチだったというのもある

*8:この時点で留年が確定しているのになぜ引き受けたのか

*9:なんかいろいろうまくいかなかったり、雀魂で役満を親かぶりしたりしていたこともあって、ちょっと鬱になっていたと思われる。

*10:知らない人向けに解説すると、アイマスは自身がプロデューサーとなってアイドルをプロデュースするゲームである。それによってプレイヤーやファンのことを慣習的にプロデューサーと呼ぶことになっている。略してPと呼ぶことも多い。ちなみにボカロPの「P」は、この文化を輸入したものである。

*11:これはオリジナルの新曲なので当然なのだが、このときは気づいていなかった。

*12:なぜ知っているかというと、とある麻雀プロの人のカラオケ動画がTwitterで回ってきたからである。

*13:知らない人はググれ

*14:なんか足んねぇよなぁ?(々が抜けてる)

*15:もちろん好き勝手して良いというわけではないと思うが。